Windows 10の大型アップデートである「Fall Creators Update」の一般向け配信が10月17日に全世界で始まる。

従来の大型アップデートと同様、10月17日のタイミングで全ユーザーに一斉配信されるわけではなく、順次配信となる見込みだ。通常で数日程度、ソフトウェアやドライバの対応状況によっては数カ月程度のラグが発生する可能性がある点に注意したい。

今回はFall Creators Updateの新機能や変更点を幾つかピックアップしてまとめた。

●細かな変更点や改良が目立つ「Fall Creators Update」

名前の通り、Fall Creators Updateはユーザーの創造力を刺激することを目指して設計されたという。もっとも、新機能が続々と追加された初期のWindows 10大型アップデートに比べて、4回目の大型アップデートとなるFall Creators Updateでの変更点はやや小振りな印象だ。

5月開催の開発者向けイベント「Build 2017」で公開され、本来はFall Creators Updateで追加されるはずだった2つの目玉機能が間に合わなかったことも大きい。目玉機能とは、過去の環境に戻って作業をやり直せる「タイムライン」と、デバイス間をまたいだコピー&ペーストが可能になる「クラウドクリップボード」だ。

一方で、インタフェースやアプリの細かな変更および改良は多岐にわたっており、「Fluent Design」と呼ばれるWindowsデバイスを横断して刷新した新しいユーザーインタフェースを採用するなど、将来のよりよいWindows 10へと向けた内部的な変更が幾つか行われている。

●検索と動画編集が大幅に強化された「フォト」

個人のクリエイティブユースで注目の新機能となるのが、刷新された「フォト」アプリと、これに連動する動画の自動編集機能「Story Remix」だ。

「フォト」はいわゆる写真を整理・保管するためのアプリだが、新機能として「ビデオの編集」と「検索」の2つが追加された。

「ビデオの編集」とは、簡単に言えばPCに取り込んだ写真や、OneDriveなどのクラウドストレージに保存してある写真を素材とし、音楽やトランジション(画面遷移)、3Dエフェクト、手書き入力などを施すことで、オリジナルの動画を簡単に作成できるというものだ。

特に凝った効果を期待しなければ、適当に写真を選んでテーマを選択するだけで“それっぽい”動画が簡単に作成できる。

この際、写真の選択や整理に役立つのが「自動タグ付け」機能だ。Windows 10が認識できる写真や画像(ローカルやOneDriveにあるもの)を自動でクローリングし、顔認証による個人の特定など、それぞれの要素に自動でタグを付与していく。クローリングが一定以上行われると、フォトアプリの検索窓にタグの候補が出現するので、これをキーワードに画像検索が簡単に行えるというわけだ。

これまで、手動でタグ付けや分類を行ったり、タイムスタンプを頼りに画像を探したりしていたユーザーにとっては、その手間を大幅に減らせるだろう。「Googleフォト」などクラウド系フォトストレージサービスでは導入されている機能で、既に活用しているユーザーもいるかもしれないが、昨今のAI技術の進化は本当に驚くばかりだ。

●洗練された「Windows Ink」の手書き入力

指やペンを使った手書き入力機能「Windows Ink」も進化。PDFのドキュメントに手書き入力が可能になった他、自動で正方形を正確に描画できるなど高機能な「Smart Ink」が利用できる。前回ペンを使った場所から手書き入力を再開できる「Windows Find my Pen」機能もある。

●「Windows Mixed Reality」が本格始動

これまで「Microsoft HoloLens」で限定的に提供されてきた「Windows Mixed Reality(MR)」の世界が、ついに一般ユーザーのもとにやって来る。

今回提供されるWindows MR(複合現実)は、HoloLensのようなAR(拡張現実)寄りの技術ではなく、一般的に言うところのVR(仮想現実)となる。これまで高価でハイスペックのマシンが必要だったPC向けVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)をOSレベルでサポートし、PC本体の要求スペックとHMDの価格を下げることで、より幅広いユーザーが導入しやすくなることが大きなポイントだ。

Fall Creators Updateの提供開始に伴い、同アップデートを導入したWindows 10搭載PCと、OEM各社から比較的低価格(299ドルから)で販売されるWindows MR対応VR HMDの組み合わせによって、多くのユーザーがWindows MRの世界を体験できるようになる。

Microsoftでは既に提供済みのものも含めて、Fall Creators UpdateのタイミングでWindows MRを楽しむための3種類のサービス(アプリ)を用意している。まずMRへの入口となる「Mixed Realityポータル」、(HMDなしでも)MRコンテンツを楽しむための「Mixed Realityビューアー」、そして3Dコンテンツを作るための「ペイント3D」だ。

PC側がスペック要件を満たしており、実際にWindows MRの世界を体験できるかどうかは「Mixed Realityポータル」を起動したタイミングで判定プログラムが走り、ユーザーに通知してくれる。

比較的ハイエンドなPC、あるいは2017年後半に登場するミドルレンジ以上のPCが最低要件となるが、試験をパスしたユーザーは是非Windows MRの世界をいち早く楽しんでいただきたい。

対応するHMDがなくても、Mixed Realityビューアーを使えば、Windows MRコンテンツを利用できる。Remix3D.comサイトで公開されている3Dオブジェクト、またはユーザーがペイント3Dで作成した3Dオブジェクトが、PCのカメラを通じて実際の環境に合成表示される仕組みだ。

なお、2017年内にはPC向けのメジャーなVRプラットフォーム「SteamVR」のアプリをWindows MRに対応させる予定があり、Windows MR向けHMDで利用可能なコンテンツが大幅に増えていくことが期待できる。

●OneDriveでは「Files On-Demand」が復活

OneDriveを中心に、ストレージ関連機能の強化もポイントだ。OneDriveでのバージョン履歴機能や「Files on Demand」機能、Storage Senseによる自動ファイル整理機能といった具合に、なるべく容量を節約しつつ、必要なファイルのバックアップはいつでも取得でき、最新状態を保つ仕組みが採用されている。

ちなみにFiles On-Demandとは、OneDriveのクラウドに保存したファイルを必要に応じてダウンロードして利用できる機能だ。ローカルにファイル本体を保存しないでクラウドに置いておき、必要なときだけダウンロードする仕組みなので、ローカルストレージの容量を抑えられる利点がある。

実はWindows 8.1で同様の機能(Placeholders)を備えていたが、Windows 10では同期フォルダの選択が可能になった一方で、この機能が省かれており、ローカルストレージを圧迫する要因と指摘されていた。復活を望むユーザーの声に応えた

●「あなたのPeople」で友人とつながりやすく

ユニークな新機能の1つが「あなたのPeople(People Hub)」だ。インストール済みのアプリや接続済みのサービスを通じて友人情報を参照し、よくアクセスする相手をタスクバー上に「ピン留め」しておくことで、必要に応じてすぐに連絡できる仕組みが用意される。

もともと前回(4月11日配信開始)の大型アップデート「Creators Update」のタイミングで導入予定だった機能が、Fall Creators Update以降に正式導入された形だ。

●「Cortana」の検索機能が進化

ユーザーインタフェース関連の細かな改良は多岐にわたる。

1つがAIアシスタント「Cortana」のインライン検索だ。従来はWeb検索した際には別途ウィンドウが開いてWebブラウザに遷移していたが、Bingの検索時にスタートメニューのCortanaウィンドウを拡大する形ですぐ結果が表示されるようになった。限定的な機能ではあるが、Cortanaを辞書代わりに利用する際に重宝するだろう。

なお、Windows 10搭載PCからCortanaを通じてAmazon.comのAIアシスタント「Alexa」にアクセスできる機能も、2017年後半に対応する見込みだ。

●整理された「設定」アプリ(HDR対応も)

「設定」アプリの「システム」項目では、ハードウェア情報、バージョン情報、Windows Defenderのステータスが一括表示されるようになるなど、分散していた項目が幾分か整理された。

設定アプリでは、Cortanaの専用メニューが追加されていたり、後述のようにWindows Defenderセキュリティセンターという専用アプリが用意されていたりと、整理されると同時により細かい設定やステータス確認が行えるようにもなっている。幾つかメニュー項目が入れ替わっているため、Fall Creators Updateを使い始める際に確認しておきたい。

ビデオの再生については「HDR(High Dynamic Range)」に対応した。対応ハードウェア環境を構築してあるユーザーは、Netflixなどの配信サービスを使って、HDRの高品質動画を味わえる。

●「Edge」ブラウザはデバイス連携が進歩

Webブラウザの「Edge」では、EPUB対応やPDF対応の強化、Windows Inkとの親和性強化など、やはり細かいアップデートがあるが、UI面での大きな変化の1つは新しい「共有」ウィンドウだろう。共有可能なアプリやユーザー名がPeople Hubから引用される形で一覧表示されるようになった。

これはEdgeだけでなく複数のアプリにおいて共通の仕様でもあり、「Project Rome」という異なるプラットフォームをまたいで情報共有を行う窓口としても機能する。これにより、Windows PCと他OSのスマートフォンを連携させることが容易になっていく。

具体的には、プレビュー版が公開されたばかりの「Edge for iOS/Android」などと組み合わせることで、「Continue on PC」機能を用いて、PC版Edgeで見ていたページをスマートフォンのEdgeで開いたり、その逆ができたりするようになる。

ただし、iPhone版およびAndroid版のEdgeはまだテストフェーズであり、全ユーザーに開放されているわけではない。

●セキュリティが強化された「Windows Defender」

セキュリティ面では「Windows Defenderセキュリティセンター」に注目したい。

前提として、Fall Creators Updateでは既存アプリの幾つかが無効化または削除されており、ソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性が悪用されるのを防ぐのに役立つツール「Enhanced Mitigation Experience Toolkit(EMET)」はその1つとなる。

基本的にはアンチウイルス・ファイアウォール機能を包含しているWindows Defenderだが、今回はEMETの機能の一部も取り込んでおり、「Windows Defenderセキュリティセンター」でこの設定が確認できる。

この他、企業向けではクラウドを組み合わせた、より高度なセキュリティ管理サービスも用意されている。

●「Windows Subsystem for Linux」が正式版に

細かいところでは、2016年8月配信開始の大型アップデート「Anniversary Update」で提供された「Windows Subsystem for Linux」が、ついにFall Creators Updateでβ版表記が外れ、正式版になった。

従来のようにコンソール経由でLinux本体をダウンロードする形式ではなく、Windowsストア経由でOSイメージが配布され、さらにUbuntu以外のLinuxディストリビューションも利用可能だ。

●そして「Redstone 4」へ

なお、早くも2018年春に配信予定の次期大型アップデート「Redstone 4(RS4)」に相当する開発プレビュー版として、10月13日にWindows 10 Insider Previewの「Build 17017」がWindows 10 Insider ProgramのFast Ring参加者向けに配信されている。まだ開発初期段階のプレビュー版だが、しばらく停滞していた新機能の追加が再び活発化しているようだ。

今回のFall Creators Updateでは残念ながら見送られた機能も、このRS4の開発サイクルでは直近のタイミングでの追加が見込まれる。興味のある方はこれを機会にWindows Insider Programに参加してみてもいいだろう。

 

 

 

 

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「Windows 10 November Update」のサポートが10月10日に終了

IaaSクラウド上でWindows Server 2016のWindows Updateはハイリスク?

Windows 10 November Update」として知られている「Windows 10 version 1511」を稼働させているユーザーは、早急にアップグレードした方がよいだろう。

Microsoftはサポートページにおいて、同バージョンに対するセキュリティアップデートが10月10日をもって配信されなくなるため、4月から利用可能になっている最新の「Windows 10」、すなわち「Windows 10 Creators Update」に更新するよう強く推奨している。

なお、Windows 10 version 1511のサポートが終了した1週間後には、「Windows 10 Fall Creators Update」、すなわち「Windows 10 version 1709」のリリースが予定されている。

サポートが継続されるWindows 10のバージョンは「Anniversary Update」(version 1607)とCreators Update(version 1703)だ。これらのバージョンに対するセキュリティパッチの配信が終了する日はそれぞれ暫定的に、2018年3月と2018年9月となっている。

Microsoftは以前からこのバージョンと、Windows 10のオリジナルバージョンであるversion 1507のユーザーに対して告知するとともに、アップグレードを推奨してきている。なお、version 1507へのサポートは5月に終了している。

同社は、古いバージョンのWindows 10を使用しているユーザーに対して、Creators Updateへのアップグレードを開始するうえで必要となる作業として、プライバシー設定の見直しを促してきている。

version 1511のサポートが終了するエディションは「Windows 10 Home」と「Windows 10 Pro」「Windows 10 Education」「Windows 10 Enterprise」となっている。

 

 

 

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IaaSクラウド上でWindows Server 2016のWindows Updateはハイリスク?

Windows 10 S搭載のモバイルノートPC「Surface Laptop」

●2017年9月のWindows Update日記

「第二火曜日の翌日」(日本において)は、Windows Updateで新しい更新プログラムが配布される毎月恒例の更新日です。以前は、リリース後長い時間が経過したWindows 7において、Windows Updateがなかなか進まないという問題がたびたび報告されましたが、2016年末に導入された「累積的な更新プログラム」による提供に切り替わってからは、スムーズに進むようになりました(スムーズになったのは、その他にもエージェントの更新などが関係しているかもしれません)。

一方、累積的な更新プログラムが基本のWindows 10やWindows Server 2016では、更新プログラムのファイルサイズが大きくなると、更新の確認やダウンロード、インストールの準備、更新のための再起動に異様に長い時間がかかるようになったり(時には完全に止まっているように見えることもあります)、更新の失敗を繰り返したりといったトラブルが目立つようになってきました。SNSなどでユーザーの反応を見る限り、多数のテスト、評価環境を毎月更新している筆者だけの話ではないようです。Windows Updateに関するトラブルの話題は、本連載でも何度も取り上げてきました。

・Windows UpdateとIaaSクラウドは忍耐が試される?(本連載 第96回)
・進まないWindows Update、やっぱり止まっていなかった(本連載 第97回)
・Windows Server 2016の今後の“更新”が怖い(本連載 第98回)
・最近のWindows Updateは、本当にどうかしている(と思う)(本連載 第103回)

2017年9月12日の早朝から、物理マシンと仮想マシンの複数バージョンのWindowsを対象に、数台ずつ順番にWindows Updateを実行していったところ(ネットワーク帯域を圧迫しないためでもありますし、仮想化環境のリソースの制約もあるため)、9月の更新で目立った問題はなさそうでした。Hyper-V上のWindows Server 2016を実行する仮想マシンの数台で異様に長い時間がかかるものもありましたが、処理の終了を待たずに、次の方法で更新を完了しました。

(1)Windows Updateを実行する前に、念のため作成しておいた仮想マシンの「チェックポイント」を適用して、正常な状態に戻す。

(2)本連載第103回で紹介したオフラインメンテナンスの方法で、仮想マシンのVHD/VHDX内のイメージに対してオフラインで累積的な更新プログラムを適用する。

(3)仮想マシンを起動して、正常に起動すること、最新のビルドに更新されたことを確認する。

(4)Windows Updateを手動で実行し、検出された更新プログラムをインストールする(今回はWindows Defenderの定義ファイルの更新と悪意のあるソフトウェアの削除ツールのみでした)。

トラブルが発生したのは、Microsoft Azure上の仮想マシンでWindows Updateを手動実行したときでした。1回ですんなりと成功するものがほとんどでしたが、Windows Server 2016を実行しているAzure仮想マシンのうち、5台で累積的な更新プログラム「KB4038782(OSビルド14393.1715)」のインストールトラブルが発生しました。

そのうち2台は、更新プログラムのダウンロード途中(45%)から何時間たっても進まない状態でしたが、本連載第96回で紹介した「Windows 10/Windows Server 2016のWindows Update正常化テク(経験則)」で更新を完了させることができました。

残る3台のうち2台では、KB4038782のインストールを完了させるための再起動後、長時間、リモートデスクトップ接続ができない状態が続きました。ローカルコンソールのスクリーンショットを見ることができるAzureポータルの「ブート診断」機能で確認してみると、「更新プログラムを構成できませんでした、変更を元に戻しています」と表示されていました(画面1)。

その後、ようやく、リモートデスクトップ接続が可能になったので、履歴を確認してみるとKB4038782のインストールは失敗していて、8月更新時点のビルド14393.1593のままでした。

最後の1台は、Azure上に構築したテスト用のActive Directoryドメインを管理するドメインコントローラーです。実は、こちらも更新プログラムのダウンロード途中(45%)で止まったように見える状態でしたが、ドメインコントローラーなので辛抱強く待ってみることにしました。しかし、6時間が経過しても45%のままで進みません。Azure仮想マシンの課金が気になるところですが、そのまま放置して翌日まで待ってみることにしました。

そして、翌日、画面に表示されていた進捗(しんちょく)は、やっぱり45%のままでした(画面2)。完全に停止しているのかどうか、ディスクI/Oや対象ディレクトリ(C:\Windows\CbsTemp)を調査してみると、同じ内容をディレクトリ名を変更しながら、何度も繰り返しているような感じでした。

●またやってしまった! Azure仮想マシンのリセットで起動時に「chkdsk」が……

これら3台のWindows Updateを正常化するために、まずは本連載第96回で紹介した「Windows 10/Windows Server 2016のWindows Update正常化テク(経験則)」を実施しました。その過程で行った再起動が完了しないことが何度かあり、仕方なくAzure仮想マシンをリセットするなどしていたところ、1台でまた起動時に「チェックディスク(chkdsk)」が走ってしまいました(画面3)。

「更新プログラムを構成できませんでした、変更を元に戻しています」のエラーで失敗した2台は、「正常化テク(経験則)」に加えて、念のため以下の2つの“おまじない”を実施しました。1台は正常完了、もう1台はどちらのコマンドもエラーとなって完了しませんでした。

sfc /scannow

DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth

コマンドのエラーは取りあえず無視することにしましたが、KB4038782でまた同じことが発生するのは見たくないので、2017年8月末に「Microsoft Updateカタログ」でのみ提供された、オプションの累積的な更新プログラム「KB4039396(OSビルド14393.1670)」を先に試してみました(画面4)。

すると、上記のコマンドが失敗した1台を含め、2台とも成功しビルド14393.1670に更新できました。続いて、Microsoft UpdateカタログからダウンロードしたKB4038782のインストーラー(.msu)を使ってインストールし、再起動したところ、ようやく最新のビルド14393.1715に更新することができました(画面5)。

Windows Updateを実行しても、Windows Defenderの定義ファイルの更新のみでしたが、問題なく完了しているようです。なお、成功した理由がKB4039396の先入れにあったかどうかは、今となってはよく分かりません。

ドメインコントローラーの1台(実は、chkdskが実行された仮想マシン)も、「正常化テク(経験則)」に上記の2つのコマンドを加えて(「DISM」コマンドの方は100%後にエラーを報告しましたが無視)、Microsoft UpdateカタログからダウンロードしたKB4038782のインストーラー(.msu)をインストールすることで、ようやく最新のビルドに更新されました。

ただし、3台の仮想マシンを更新するために再起動する際、Azureポータルの「ブート診断」がスクリーンショットを表示してくれないことがありました。そのため、進捗状況は全く見えませんでした。Azureポータルの仮想マシンの「概要」ブレードに表示されるパフォーマンスグラフは、ある程度、ヒントになるかもしれません。クラシックデプロイモデルの仮想マシンの場合、AzureポータルにはCPU使用率のグラフしか表示されないので、クラシックポータルを使用するとよいでしょう(画面6)。なお、クラシックポータルでのAzure仮想マシンの管理は、2017年11月15日以降利用できなくなることが予告されています。

・クラシックポータルにおける仮想マシンのサービス終了通知(連載:Microsoft Azure最新機能フォローアップ 第39回)

●原因は謎だけど、シャットダウン方法に工夫が必要かも……

ちなみに、今回Windows Updateで大きな問題が発生した3台の共通点は、OSがWindows Server 2016(いずれもビルド14393.1593)ということだけです。Azure仮想マシンのサイズ(D2v2、A2、D4v3)、デプロイモデル(クラシック2台、リソースマネージャー1台)、インストールされている役割(ドメインコントローラー、ファイルサーバ、Hyper-V)はいずれも異なりますし、その役割以外の特別なアプリケーションはインストールも構成もしていません。そして、2017年8月の更新の際には、3台とも問題なく完了していました。

あくまでも筆者の想像ですが、Windows Server 2016のシャットダウン操作に原因があるかもしれません。Windows Server 2016(およびWindows 10)は、Windows Updateなど、何かしているという意識がユーザーにはなくても、シャットダウンまでに長い時間がかかることがあるようです。ローカルのコンピュータであれば、コンソールに表示される「Windowsの準備をしています、コンピューターの電源を切らないでください」という表示が長く続くことで気が付くかもしれません。

一方、Azure仮想マシンなどクラウド上の仮想マシンの場合、シャットダウンに意図せず時間がかかると、通常はローカルコンソールが見えないため、正常なシャットダウンが完了しない状況が起こり得ます。

例えば、運用環境用ではないAzure仮想マシンでは、コンピューティング料金を節約するために、Azureポータルの「停止(Stop)」(クラシックポータルの「シャットダウン」)メニューを使用して稼働中の仮想マシンをシャットダウンし、コンピューティング料金が発生しない「停止済み(割り当て解除)」状態にするのが一般的だと思います。

この方法でシャットダウンした場合、Azure側のタイムアウトよりもシャットダウンに要する時間が長くなってしまうと、突然電源がオフにされることになります。ローカルコンソールには「電源を切らないでください」と表示されていても、Azureのサービスには見えません。仮想マシンを次に開始してリモートデスクトップ接続したときに「シャットダウンイベントの追跡ツール」が表示されるようであれば、正常なシャットダウン前に電源がオフになっていることを示しています(画面7)。

Azure側の実際のタイムアウトがどれくらいなのか分かりませんが、Windows PowerShellで同様の操作を行う「Stop-AzureRmVM」コマンドレットは、正常なシャットダウンを10分間待つと聞いたことがあります(不確かな情報です)。

この問題を回避するには、Azure仮想マシンのゲストOS側からシャットダウン操作を行い、仮想マシンを“停止状態”にしてから、Azureポータルの「停止(Stop)」(クラシックポータルの「シャットダウン」)メニューを実行します(画面8)。Windows Server 2016の仮想マシンの場合は、念のためこの操作で停止することをお勧めします。Windows Server 2012 R2の仮想マシンでは、筆者はこのような問題に遭遇したことはありません。

リソースマネージャーでデプロイした仮想マシンでは、「自動シャットダウン(Auto-shutdown)」機能がサポートされます。これは、指定した時刻に自動でシャットダウンを開始する機能です。この機能を利用する場合も、正常なシャットダウンが完了する前にオフになってしまう可能性があることを考慮した方がよいでしょう(画面9)。

筆者の環境には当てはまりませんでしたが、Azureのエージェントが原因でWindows Updateが影響を受けることもあるようです。

・Windows仮想マシンにて更新プログラムの適用に失敗する場合のトラブルシュート(Japan Azure Technical Support Engineers' Blog)

クラウドのように、管理者の手の届かないところでのシャットダウンや再起動、Windows Updateの問題は対処が厄介ですし、時間もお金もかかります。今回、3台のAzure仮想マシンのWindows Update問題の解消には、時間にして2日間、仮想マシン料金にして2000円ほどかかりました。

 

 

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日本マイクロソフトから登場した「Surface Laptop」は、13.5型液晶搭載のモバイルノートPCである。これまでのSurfaceシリーズは、タブレットとしてもノートPCとしても使える2in1 PCとして展開してきたが、Surface Laptopは、オーソドックスなクラムシェル型ノートPCであり、主に学生をターゲットとした製品である。

Surface Laptopは、日本マイクロソフトの製品として初めて、OSにWindows 10 Sを採用したことが特徴だ。Windows 10 Sは、Windows 10ファミリーに新しく追加されたエディションであり、Windowsストアから入手したアプリしか動かないようになっている。いわゆるストアアプリしか利用できず、デスクトップアプリは動かない半面、セキュリティや性能の点ではメリットがある。

Surface Laptopは、搭載メモリやSSD容量の違いによって、下位モデルと上位モデルの2モデルがある。今回、8GBメモリと256GB SSDを搭載した上位モデルを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

■筐体は質感の高いアルミ合金製、キーボード周りにアルカンターラを採用

まず、外観からチェックしていこう。Surface Laptopは、シンプルで洗練されたデザインである。筐体の素材にはアルミ合金が採用されており、質感も高い。本体色は、上位モデルのみプラチナ、グラファイトゴールド、バーガンディ、コバルトブルーの4色から選択可能であり、カラーバリエーションが豊富なことは嬉しい(下位モデルはプラチナのみ)。

今回の試用機の筐体カラーはプラチナだが、実際の色はつや消しのシルバーといったほうが近い。天面の中央には、Windowsの旗マークがあり、マイクロソフトのSurfaceシリーズであることを主張しつつも、高級感を演出している。

キーボードの周りやパームレスト部分に、アルカンターラと呼ばれる人工皮革素材を採用していることもSurface Laptopの特徴だ。アルカンターラは、イタリアのアルカンターラという企業が製造している素材で、外観や触感は天然のスエードに似ている。そのため、自動車の内装や家具などに使われており、BMWやベンツ、ランボルギーニなどにも採用されている。

アルカンターラは東レが開発したエクセーヌの別ブランドであり、耐久性や耐光性、難燃性に優れた素材だ。日本マイクロソフトの製品としては、Surface Pro 4用の「Signatureタイプカバー」に続く採用となる。このアルカンターラの触感だが、手のひらを置いても、冷たさを感じず、適度な柔らかさが心地よい。

本体サイズは、308.02×223.20×14.47mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.25kgである。13.5型液晶搭載モバイルノートPCとしては、最軽量というわけではないが、十分携帯できる重さだ。液晶のヒンジは130度程度まで開く。

■PCとしての基本性能にも不満はない

では、Surface LaptopのPCとしてのスペックを見ていこう。Surface Laptopは、CPUとして、Core i5-7200U(2.50GHz)を搭載する。Core i5-7200Uは、開発コードネームKaby Lakeと呼ばれていたCPUであり、デュアルコアCPUだが、Hyper-Threadingテクノロジーにより、最大4スレッドの同時実行が可能だ。また、TurboBoostテクノロジーにより、負荷に応じて最大3.10GHzまで動作周波数が向上する。

メモリは上位モデルは8GB、下位モデルが4GBだが、後から増設はできないので、なるべく上位モデルを選ぶことをお勧めする。

ストレージとしては、256GB SSDが搭載されている(下位モデルは128GB)。SSDは、NVMe対応であり、試用機には東芝の製品が採用されていた。上位モデルなら、メインマシンとして十分利用できる性能を持っていると言える。

■キーボードやタッチパッドの操作性も良好

キーボードは、アイソレーションタイプの全84キーで、キーピッチは19mm、キーストロークは1.5mmである。キー配列は標準的で、剛性感も十分あり、タイピングはしやすい。ただし、電源ボタンがキーボード最上部に配置されていることがやや気になる。

キーボードにはバックライトが搭載されており、暗い場所でも快適に入力が可能だ。バックライトの輝度は3段階に変更できる。ポインティングデバイスとしては、タッチパッドが採用されている。2in1 PCやモバイルノートPCでは主流のクリックボタンとパッドが一体化したタイプだが、パッドのサイズが大きく、操作はしやすい。複数の指でのジェスチャー操作にも対応している。

■アスペクト比3:2のタッチパネル対応高解像度液晶を搭載、Surfaceペンにも対応

13.5型で、2,256×1,504ドットの高解像度液晶を搭載していることも魅力だ。最近は、フルHD液晶が主流だが、フルHDの場合、画面のアスペクト比は16:9になる。大部分のWebサイトは縦長にデザインされているので、アスペクト比16:9でWebブラウズをすると、縦方向の解像度がもう少し欲しいと感じることも多い。Surface Laptopの液晶のアスペクトは3:2であり、1,920×1,080ドットのフルHDと比べて解像度が縦横とも高いだけでなく、より正方形に近くなっているため、Webブラウズなども快適だ。

さらに、10点マルチタッチ対応のタッチパネルを搭載しており、タッチ操作も可能なほか、オプションの新型Surfaceペンによる手書き入力にも対応している。現時点では、Surface Laptopで利用する場合の筆圧感知レベルは1,024段階で、傾き検知には対応していないが、今後のアップデートで筆圧感知レベルがSurface Proと同じく4,096段階になり、傾き検知にも対応するとのことだ。また、液晶の保護ガラスとして、コーニングの「Gorilla Glass 3」が採用されており、傷などにも強い。

今回は、Surfaceペンもあわせて試用してみたが、遅延が少なく、書き味は非常に良好であった。付属の「Office Home & Business 2016」の「OneNote 2016」やプリインストールされている「SketchBook」の体験版が筆圧感知に対応している。ただし、タブレット形状になるわけではないので、本格的なイラストを描くにはあまり向かない。

■Windows Hello顔認証カメラやTPM 2.0も搭載

Surface Laptopは、セキュリティ機能も充実している。液晶上部に、ビデオチャットなどに利用できる720pカメラとWindows Hello顔認証サインイン用カメラを搭載しており、Windows Helloの顔認識機能を利用してログオンが可能だ。

実際に、Windows Helloの顔認識を使ってみたが、認識は高速で精度も高い。液晶上部をちょっと見つめるだけで即座にログオンされるので、非常に快適であった。指紋認証よりも気軽に利用できるので、セキュリティを気にする人には特にお勧めしたい。また、セキュリティチップのTPM 2.0も搭載している。

■インターフェイスは必要最低限だがバッテリ駆動時間は長い

インターフェイスとしては、USB 3.0とMini DisplayPort、ヘッドセット端子のほか、Surface Connectと呼ばれる独自の端子が用意されている。USBポートはできれば2基欲しかったところだが、必要最低限の端子は備えているといえる。

無線機能としては、IEEE 802.11ac対応無線LAN機能とBluetooth 4.0+LEを搭載。ACアダプタは44W仕様で、コンパクトで携帯しやすい。DCコネクタがSurface Connectであり、USB Type-Cと同じく上下の区別がないので、どちら向きに挿しても問題がない。また、Surface Conncectはマグネットで固定される仕組みになっており、強い力がかかると外れるようになっている。

ビデオ再生時の公称バッテリ駆動時間は、最大14.5時間とされている。そこで、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、13時間7分という結果になった。無線LAN常時オンでこれだけ持てば、かなり優秀と言える。

■Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えも簡単

前述したように、Surface Laptopは、OSとしてWindows 10 Sを搭載しているため、実行できるアプリに制限がある。Windowsストアからダウンロードしたアプリ以外を実行しようとすると、ストアアプリしか実行できないことを伝える画面が表示され、実行できない。しかし、従来のデスクトップアプリが使えないと不便なことも多いため、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えが可能になっている。

Windows 10 Proへ一度切り替えると、基本的にWindows 10 Sに戻すことはできない。また、Windows 10 Proへの切り替えは、本来は有料(6,900円)なのだが、2018年3月末(当初は2017年12月末までだったが延長された)までは特別に無料で切り替えが可能だ。切り替えは、Windowsストアから行なえ、切り替えにかかる時間も2分30秒程度であった。また、Windows 10 SからWindows 10 Proへの切り替えを行なっても、すでにインストールされているアプリやデータなどが消えることはない。

■ベンチマーク結果も満足

参考のために、ベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー XIV 紅蓮のリベレーターベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。

比較用として、LGエレクトロニクス「LG Gram 15Z970-GA55J」、日本HP「HP Elite Slice」、レノボ「ThinkPad X1 Carbon」の値も掲載した。なお、これらのベンチマークはストアアプリではなく、Windows 10 Sでは動かないため、Windows 10 Proに切り替えた状態で計測を行なった。

結果は下の表に示したとおりで、同じCPUを搭載したLG Gramと比べて、PCMark 8のスコアはやや低くなっているが、ドラゴンクエストXベンチマークソフトは、かなり上回っている。CrystalDiskMarkは、シーケンシャルリードはかなり高速だが、ランダムリードやランダムライトの性能は他のSSDに比べて落ちるという結果になった。実際の使用感は快適であり、メインマシンとしても十分に使える性能であろう。

■完成度とコストパフォーマンスの高いモバイルノートPC

Surface Laptopは、Surfaceシリーズ初のオーソドックスなクラムシェル型モバイルノートPCだが、Surfaceシリーズで培った技術が注ぎ込まれた、完成度の高い製品である。Windows 10 Sを採用したことで、下位モデルが126,800円、上位モデルが146,800円と、リーズナブルな価格を実現している。Office Home and Business 2016が付属することを考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。

Windows Hello顔認証への対応やアスペクト比3:2の高解像度液晶も魅力だ。アルカンターラ素材の手触りも素晴らしい。バッテリ駆動時間も長いので、遠方への出張が多い人にもお勧めだ。PCとしての基本性能だけでなく、デザインにもこだわりたいという人には、有力な選択肢となるだろう。

 

 

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Office 365の各アプリケーションのテーマと背景を自分好みにカスタマイズしてみよう。
本連載は、マイクロソフトのSaaS型デスクトップ&Webアプリケーション「Office 365」について、仕事の生産性を高める便利機能や新機能、チームコラボレーションを促進する使い方などのTipsを紹介する。
Office 365を使いこなして仕事を早く終わらせたい皆様にお届けする本連載。第2回は、Office 365を自分が見やすいデザインに変更して、仕事を効率アップしよう。

各Officeアプリケーションは、ウィンドウフレーム(枠)の配色を変更する「Officeテーマ」と、リボン上部の背景模様を選択する「Officeの背景」と、2通りのデザインカスタマイズ機能を用意している。

「Officeテーマ」からのカスタマイズ
まず、「Officeテーマ」からのカスタマイズでは、Office 2013時代から引き継いだ「カラフル」、「白」に加えて、Office 2016から新たに加わった「濃い灰色」が選択可能。さらに2016年1月の更新から加わった「黒」も選べる。

長年Officeアプリケーションは白色系を基調としてきたが、OSS系テキストエディターでは黒色系が好まれる傾向が強い。あくまでも個人的見解だが、黒色を新たに採用したのは、OSS界隈にラブコールを送り、近年は積極的なコラボレーションを行っているマイクロソフトの開発チームの姿勢を表したものではないだろうか。

ただし、黒色は明暗の差が強いため、人によってはディスプレイの輝度を暗くした場合にリボンやステータスバーのメッセージが見えにくくなってしまう。Officeアプリケーションは長時間使うお仕事の人は、ご自身の目が疲れにくい配色を選択してほしい。

なお、選択したテーマはWord/Excel/PowerPoint/Outlook/OneNoteに適用されるが、Accessは例外だ。Accessで選択可能なテーマは「カラフル」、「白」の2種類に限定され、「濃い灰色」と「黒」は用意していない。その理由をマイクロソフトは明らかにしていないが、Accessの内部構造や開発チームの意図などがあるのだろう。

「Officeの背景」からのカスタマイズ
次に、「Officeの背景」からのカスタマイズ。こちらからは、「背景なし」、「カリグラフィ」「ランチボックス」、「雲」、「円と縞模様」、「回路」、「学用品」、「幾何学模様」、「手書きのダイヤモンド」、「手書きの円」、「春」、「水中」、「星」、「年輪」、「麦わら」の15種類から選択できる。この背景模様は、Microsoftアカウントもしくは職場/学校アカウントでサインインしないと変更できない。

上図で紹介したように、極端に強調するような模様が加わる訳でもなく、表示領域も広くない。MicrosoftはOfficeテーマを「濃い灰色」にすると背景が目立つと説明するが、筆者が目にした限りはあまり差を感じなかったため、上図は「カラフル」で用意した。背景模様は見やすさにそれほど影響がないものの、自分好みのデザインであるだけで気分が上がるのではないだろうか。カスタマイズ機能を使って、日常業務を気分よくこなしてほしい。

 

 

 

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思わぬ落とし穴……ストアで買った「Adobe Photoshop」が「Windows 10 S」で動かない

Microsoftは2017年7月末に、主に教育分野向けのWindows 10の新しいエディション(SKU)である「Windows 10 S」のISOイメージをMSDN(Microsoft Developer Network)サブスクライバーに対して公開しました。また、8月に入ると、Windows 10 Pro、Pro Education、Enterprise、Educationの正規ライセンスを持つユーザーに対して、そのPCをWindows 10 Sにアップグレードしてテストできるツール(実体は「アップグレードアシスタント」によるダウンロードと新規インストール)を公開しました。

皆さんは、Windows 10 Sについてご存じですか。「ストアから入手したアプリだけを実行でき、コマンドプロンプトやPowerShellは使えない」という特徴を知っている人も多いと思います。先に指摘しておきますが“ストアアプリだけを実行可能”という特徴から、Windows 8にあったARMプロセッサ版「Windows RT」の新しいバージョンと思っている人がいるかもしれませんが全く違います。

Windows 10 Sは99%以上(この数字は単なる表現であり、適当なものです)がWindows 10 Proと同じものであり、実行可能な操作が制限され、ロックダウンされたものです。これについては、筆者の個人的な評価レポートをブログにまとめています。

さて、Windows 10 Sで許可されていないアプリケーション(例えば、Windows標準の「コマンドプロンプト」)を実行しようとすると、メッセージが表示されて、ブロックされます(Microsoft Edge経由でダウンロードしたプログラムを実行しようとした場合は、もっとグラフィカルな表示になります)。メッセージこそ異なりますが、Device Guardでブロックされたときの様子とよく似ていませんか。

実際、Device Guardを構成した場合と同様に、ブロックされた履歴はイベントログの「Microsoft-Windows-CodeIntegrity/Operational」ログに、ソース「CodeIntegrity」、イベントID「3081」のエラーとして記録されていました。エラーの中身は「that did not meet the Enterprise Signing Level requirements or violated code integrity policy.」(エンタープライズ署名レベルの要件を満たしていないか、コード整合ポリシーに違反しています)となっています。ちなみに、「イベントビューアー」の使用はWindows 10 Sでもブロックされません。

MicrosoftはWindows 10 Sの提供に先立ち、Device Guardのコード整合性ポリシーを利用して、Windows 10 Sと同等のブロック機能をテストすることができる、カスタマイズ済みのコード整合性ポリシーを提供していました。以下のチュートリアルに「To do test your app, you can apply a Device Guard Code Integrity policy on a device that is running Windows 10 Pro」と書いてある通り、Device Guardのコード整合性ポリシーをWindows 10 Proに適用できるのです。チュートリアルに従って実際に試してみると、確かにブロックされました。ブロックされたときのメッセージは、Windows 10 EnterpriseでDevice Guardを構成したときと全く同じです。

 

 

 

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MS、「Windows 10 Pro for Workstations」発表--今秋リリース

「Windows 10 S」が登場し、「Windows 10 Fall Creators Update」の正式リリースが間近に控えるなか、「Spotify」「Inkscape」「Krita」などなど、大物アプリが続々と“ストア”への登場を果たしています(そういえば「iTunes」はいつになるんでしょう?)。

フリーのドローソフト「Inkscape」も登場! ようやく充実を見せてきたストアに注目 - やじうまの杜 - 窓の杜

しかし、その流れに水を差すかのような、ちょっと気になる問題を耳にしました。――“ストア”で購入した「Adobe Photoshop Elements 15」が「Windows 10 S」で動作しないという不具合が発生しているのだそうです。

IMPORTANT: This app works with Windows 10 Pro and Home, but DOES NOT WORK WITH WINDOWS 10S. Microsoft and Adobe are working to fix this issue.

「Adobe Photoshop Elements 15」の“ストア”での注意書き

ちょうど手元に“Surface Laptop”と「Adobe Photoshop Elements 15」のライセンスがあったので実際に試してみたのですが、“ストア”での注意書きの通り、「Windows 10 S」で「Adobe Photoshop Elements 15」を動作させることはできませんでした。

どうやら初期化処理の際に「Windows 10 S」でブロックされているリソースへアクセスしており、プロセスがクラッシュしてしまうようですね。この不具合はいずれ解決されるでしょうから、それを気長に待ちましょう。

それよりも問題は、こうしたトラブルが他のアプリケーションでも発生しないかということです。“ストア”にアプリがあるから大丈夫と思って「Windows 10 S」デバイスを購入したのに、肝心のアプリが動作しないでは困ります。

また、「Windows 10 S」は機能が制限されたロックダウンモデルなので、「Windows 10 Home」や「Windows 10 Pro」では可能なワークアラウンド(回避策)が使えないことも考えられます。コマンド一発で直るささいな問題であっても、「コマンド プロンプト」や「PowerShell」が使えない「Windows 10 S」では直しようがなかったりします。

開発者がアプリを“ストア”で公開できるようにパッケージングする際、「Windows 10 S」でテストしてくれればよいのですが、それもなかなか難しいのが現実です。Microsoftは「Windows 10 S」のインストーラーを提供していますが、仮想マシンはサポートしていないため、実機(しかもライセンスの高い「Windows 10 Pro」が入った!)を1台、「Windows 10 S」のために犠牲にしなくてはなりません。

既存「Windows 10 Pro」に「Windows 10 S」を導入するツール、さっそく試してみました - やじうまの杜 - 窓の杜

新しいOSが生まれれば、多少の互換性問題が発生してしまうのは仕方のないことです。しかし、「Windows 10 S」環境でテストせずとも機械的に問題を検出できる仕組みを整えるなど、できるだけ早めに対策を取らなければ、せっかくの「Windows 10 S」の価値が伝わらず、普及を妨げる結果になりはしないかと少し心配になりました。

□おまけ

「Windows 10 S」では「コマンド プロンプト」や「PowerShell」のほかにも、“Windows Subsystem for Linux(WSL)”などが利用できないことが公表されています。つまり、“ストア”から「Ubuntu」や「SUSE」をインストールすることはできません(もしくは、しても動作しない)。年内ならば「Windows 10 S」から「Windows 10 Pro」へのアップグレードは無料なので、これらの機能を使いたいユーザーはアップグレードしておくべきでしょう。

 

 

 

 

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Windows 10の脆弱性情報に最大2700万円、Microsoftが新たな報奨金制度

Microsoftが「Windows 10」の新しいエディション「Windows 10 Pro for Workstations」を開発しているという憶測は正しかったようだ。Microsoftは2017年秋に提供を開始すると発表した。

MicrosoftのWindows and Devicesグループでパートナーグループプログラムマネージャーを務めるKlaus Diaconu氏は米国時間8月10日、「パワーユーザーは効率よく動かしたいという独自のニーズを抱えていることをわれわれは把握している。フィードバックを真剣に受け止めている」と公式ブログに記している。

Windows 10 Pro for Workstationsは「サーバグレードのハードウェアを独自にサポート」し、ミッションクリティカルでコンピュートインテンシブなワークロードに対応するよう設計されているという。

この新エディションは、9月頃に登場する予定の「Windows 10 Fall Creators Update(1703)」の一環として提供される。ReFSファイルシステム、永続メモリ、SMB Directを使った高速なファイル共有などの特徴を備え、サーバグレードの「Intel Xeon」「AMD Opteron」プロセッサ(最大4CPU)と最大6Tバイトの「大規模な」メモリといった新しいハードウェア設定をサポートする。現時点でWindows 10がサポートするのは、最大2CPUと2Tバイトとなっている。

The Vergeが報じていたように、Workstationsエディションの存在を示すMicrosoftのスライドが、6月にリークしていた。

 

 

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Windows Updateのストレスが減る? 操作不能になる時間を短縮

 

米Microsoftは7月26日、Windows 10の脆弱(ぜいじゃく)性を発見・報告した研究者に報奨金を支払う新たなバウンティプログラム「Windows Bounty Program」を発表した。

今回のバウンティプログラムの対象にはWindows Insider Previewの全機能が含まれ、Hyper-V、Mitigationバイパス、Windows Defender Application Guard、Microsoft Edgeを重点エリアとする。

報告を募るのは、リモートコード実行、権限昇格、設計上の欠陥といったユーザーのプライバシーやセキュリティを脅かす脆弱性。発見者には内容に応じて500ドル~25万ドル(約5万円~2700万円)の報奨金を支払う。

Microsoftは2012年以来、さまざまなWindowsの機能についてバウンティプログラムを実施してきた。そうした取り組みを通じて、攻撃を困難にする防御技術を開発し、ソフトウェアのセキュリティ強化を図っていると説明している。

 

 

 

Windowsユーザーにとって憂鬱(ゆううつ)なことの1つが、定期的にやってくるセキュリティ対策などのWindows Updateだ。アップデートと再起動の実行によって、最低でも十数分程度は操作不能になるため、どうしても生産性が落ちてしまう。

Windows 10ではアップデートに伴うOSの再起動を行わない「アクティブ時間」の設定が可能だが、一般ユーザー向けのWindows 10 Homeでは基本的に自動でWindows Updateが行われ、手動で制御できないため、意図しないタイミングでWindows Updateが始まってしまい困った経験を持つ方も少なくないだろう。

Microsoftもこうした問題は把握しており、今秋に配信される予定のWindows 10次期大型アップデート「Fall Creators Update」では改善策を講じる。Windows 10のFeedback Hubでの報告によれば、Windows Update実行中に操作不能になる時間が短縮されるようアップデートプロセスを見直すという。

●バックグラウンド処理を増やして操作不能な時間短縮へ

Windows Updateは、ユーザーの操作が可能な段階でバックグランドタスクとしてアップデート作業が進む「オンラインフェーズ」と、ユーザーの操作が不可能になる段階の「オフラインフェース」に分かれている。

現行のWindows Updateのプロセスを単純化すると、以下の順番で処理が行われる。オンラインフェーズとオフラインフェーズが完了し、最終的な再起動が実行されると、PCはオンラインに戻って利用可能になる仕組みだ。

・オンラインフェーズ(ユーザーの操作が可能)
・PCがアップグレードをチェック
・アップグレードのダウンロード
・インストールを開始する前の再起動までの待機処理

オフラインフェーズ(ユーザーの操作が不可能)

・PCの再起動とインストールプロセスの開始
・ユーザーコンテンツ(アプリや設定)のバックアップ
・新しいOSファイルの書き込み(Windows Image:WIMプロセス)
・ドライバとOS関連ファイルの移行
・ユーザーコンテンツの復元
・PCの再起動とアップデートの後処理

新しいWindows Updateのプロセスでは以下のように、オフラインフェーズに行われる作業のうち、「ユーザーコンテンツのバックアップ」と「新しいOSファイルの書き込み」の2つをオンラインフェーズに落とし込み、ユーザーが操作不能になる時間の短縮を図る。

・オンラインフェーズ(ユーザーの操作が可能)
・PCがアップグレードをチェック
・アップグレードのダウンロード
・ユーザーコンテンツ(アプリや設定)のバックアップ
・新しいOSファイルの書き込み(Windows Image:WIMプロセス)
・インストールを開始する前の再起動までの待機処理

オフラインフェーズ(ユーザーの操作が不可能)

・PCの再起動とインストールプロセスの開始
・ドライバとOS関連ファイルの移行
・ユーザーコンテンツの復元
・PCの再起動とアップデートの後処理

Microsoftによれば、これでかなり操作できない時間の短縮が可能になるというが、実際にどの程度有効かは不明だ。

オンラインフェーズでは、ユーザーの操作性に影響を与えないよう、低い優先度でバックグラウンド処理が進むため、このプロセスを増やしたことで、Windows Updateの合計時間は長くなるという。また、オンラインフェーズ中の手動による再起動は厳禁だ。

しかし、オフラインフェーズの削減によって、操作できない時間は短くなり、ユーザーの利便性は高まることが期待できる。うまくいけば、Windows Updateに伴う生産性の低下を従来より抑えられるかもしれない。

 

 

 

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